2017年12月1日金曜日

《米ジュゴン訴訟『原告団、独自調査へ』》「国防総省の隠蔽監視」

《米ジュゴン訴訟『原告団、独自調査へ』》「国防総省の隠蔽監視」
〈琉球新報2017年11月30日 31面〉

名護市辺野古での新基地建設が国指定の天然記念物ジュゴンに影響を与えるとして、日米の市民や自然保護団体が米国防総省に工事の中止を求めた米ジュゴン訴訟の原告団が、県や地元住民、科学者ら利害関係者を対象に、環境への影響など聞き取り調査を独自で行うことが29日、分かった。原告で来沖中の自然保護団体・米生物多様性センター(CBD)のピーター・ガルビンさん(53)が本紙に明らかにした。

米国防総省は米連邦地裁での差し戻し審理に伴い今後、米国家歴史保存法(NHPA)に基づき、利害関係者に聞き取り調査を行う。原告団は同様の調査を行うことで、国防総省が新基地が及ばす環境の影響を十分に調査しているのかなどを確認する狙いがある。
NHPAでは、文化財保護の観点から事業者が利害関係者との十分な協議や、事業が環境や周辺住民の生活などに与える影響について調査することが義務付けられている。同法は海外の文化財にも適用される。国防総省は2014年までに実施した利害関係者への聞き取り調査や協議を基に、「工事がジュゴンに与える影響はない」と結論付けた。しかし、ジュゴン訴訟では実際は十分な聞き取り調査をしていなかったことが明らかになっている。
ガルビンさんは「われわれが同時進行で協議することで、国防総省がこれ以上、真実を隠蔽できないように監視したい」と強調した。
国防総省が再度実施する利害関係者への聞き取り調査や協議は、ジュゴン訴訟最大の争点となる。原告団は、2か月以内にNHPAに精通する学者や科学者などからの意見も参考に利害関係者を選定するほか日本側の原告団と協力し、県内での聞き取り調査も進める。
来年5月の差し戻し審理に向け、新基地建設を巡る現状を調査するためにCBDのメンバーや人権弁護士など米国側の原告ら9人が現在来沖している。原告団は29日、県庁で富川盛武副知事と面談し、辺野古新基地建設の阻止に向け連携を強化することを確認した。

《不屈の精神で共に》米ジュゴン訴訟原告 ガルビンさんに聞く
日米の市民や自然保護団体が米国防総省を提訴したジュゴン訴訟の原告で、辺野古の現状を確認するために来沖中のピーター・ガルビンさん(53)に話を聞いた。

ー10年ぶりの来沖の心境は。

「県民の声を無視し、工事を強行する日米両政府への不信感は増すばかりだ。30日に現場へ行くが、前回の訪問時より確実に状況が悪化していることは想像できる。現実を直視することへの恐怖心もあるが、現状を把握することで闘い(ジュゴン訴訟)への意思をより強固なものにしたい。日々現場で声を上げている市民や日本側の原告団と交流することで、より一層の連帯強化を図りたい」
ー来年5月に差し戻し審理を控えている。

自国の司法が全うな判断を下したことに大変喜んでいる。米国防総省は今後、国家歴史保存法に基づき利害関係者と再協議する必要が出てきた。彼らが最も恐れていることは、工事によりジュゴンに影響がでること、そしてそれを懸念する利害関係者の発言が明るみに出ることだ。県やわれわれ原告団は今、非常に厳しい局面にいるが、あらゆる手段を駆使して政府を追及できれば、まだまだ、勝ち目はある。沖縄の財産のジュゴンや美しい海を後世につなぐため、不屈の精神で共に闘い抜きたい」

【原告と名護市長 連携強化を確認】
米ジュゴン訴訟米国側原告団らは29日、名護市役所で稲嶺進市長と面談した。両者は新基地阻止のため連携し、協力を深めることを確認した。
稲嶺進市長はジュゴン訴訟控訴審で、米連邦高裁が連邦地裁に審理を差し戻したことについて「皆さんのおかげで希望が与えられ、感謝している。今後も力を貸してほしい」などと話した。
稲嶺進市長は大浦湾で日米両政府が進める埋め立て工事の現状を説明した。「新基地の耐用年数は100年以上と言われている。子や孫に基地から派生する被害や負の遺産を背負わせることはできない」と訴えた。

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