2017年12月7日木曜日

《遺族 元軍属に賠償要求》女性暴行殺人「被告は棄却求める」

《遺族 元軍属に賠償要求》女性暴行殺人「被告は棄却求める」
〈琉球新報2017年12月7日1面〉


2016年4月に発生した米軍属女性暴行殺人事件で、被害者の遺族が損害賠償命令制
度に基づき被告に損害賠償を求めた第1回審理が6日、那覇地裁(柴田寿宏裁判長)
で開かれた。
1日に殺人などの罪で無期懲役の判決を受けた元海兵隊員で事件当時軍属のケネス・
フランクリン・シンザト(旧姓ガドソン)被告(33)は答弁書で請求棄却を求めた。
遺族側は那覇地裁による賠償命令が決定した場合、即時に日米両政府に補償を求め
る方針だが、日米地位協定に詳しい弁護士によると、米側の直接雇用ではないこと
などから補償されない可能性があるという。
損害賠償命令制度は犯罪被害者の保護や支援のため2008年から始まった。
殺人や傷害などの刑事事件を担当した裁判所が引き続き被害者側による損害賠償請
求を審理する訴訟手続で、有罪判決後直ちに開始される。
申立は10月27日付。遺族の代理人弁護士によると、次回来年1月31日で決定が出る
可能性がある。
那覇地裁は1日、ケネス被告に求刑通り無期懲役を言い渡した。ケネス被告は6日現
在、控訴してない。


《日米の補償 対象外も》元軍属女性暴行殺人事件「直接雇用ではない」理由に
〈琉球新報2017年12月7日 29面〉


米軍属女性暴行殺人事件の被害者遺族に対する補償を巡り、事件当時の被告が米軍
の直接雇用ではなかったため、日米両政府の補償の対象外となる可能性がある。日
米地位協定に詳しい弁護士によると、遺族が求める補償が実現するかは不透明で、
沖縄防衛局の対応によっては地位協定の問題点として反発が強まりそうだ。
事件を受け、遺族は昨年10月から沖縄防衛局に補償金請求手続きの可否について問
い合わせている。しかし遺族側代理人の村上尚子弁護士によると「確認する」との
回答しかないという。村上弁護士は「遺族は不安と不信感をもっている」と、国側
の対応を批判した。
沖縄防衛局は6日、本紙取材に「一般論として日米地位協定に基づく補償については
個別事案に即して米側との協議の上、対応する。本件については司法手続き中で、
補償について現段階で答えることは差し控えたい」と述べるにとどめた。
地位協定18条6項は公務外の米軍関係者の不法行為に対する補償請求の対象について
「構成員または被用者(雇用者)」と規定している。被告は事件当時、米軍嘉手納
基地でインターネット関連業に従事していた。沖縄防衛局によると、同条項に当事
者間で示談が困難な場合に、同条項に基づき米国政府が慰謝料額を決定するという。
地位協定に詳しい新垣勉弁護士は「条項上、米軍の直接雇用ではない軍属は対象外
になる。そのため被告の事件は適用しないと米側は慰謝料を支払わないだろう。日
本政府も法的根拠がないと対応しないのではないか」と見通した。
一方で、裁判権では対象が「被用者」かどうかの線引きはなく「軍属」は米軍人と
同じ日米地位協定に基づく取り扱いを受ける。

新垣弁護士は「軍属は米軍の仕事のために日本に来ている。補償と裁判権で適用に
違いあるのでは矛盾がある。補償問題だけ被用者に限定するのはおかしい」と問題
視する。「補償問題をみても協定の改正が必要だ。遺族に沖縄防衛局が回答しない
のは社会問題になるので引き延ばしているのではないか」と指摘した。

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