2017年12月18日月曜日

《ジュゴン保護「移入で」》生態専門家批判「短絡的」『辺野古・環境監視委員ら』

《ジュゴン保護「移入で」》生態専門家批判「短絡的」『辺野古・環境監視委員ら』
〈琉球新報2017年12月17日 1面〉


11月末に開催された日本サンゴ礁学会第20回大会で、同委員会で普天間飛行場代替施設建
設事業に係る環境監視等委員会の委員でもある識者らが、県内海域に生息するジュゴンの
保護対策として「外部からの導入を検討することが必要」と提言していたことが16日まで
に分かった。識者らは5日に防衛省であった環境監視等委員会の会合でも他の委員に資料を
配布し、同様の説明をしていた。トキやオオカミの繁殖事例とジュゴンを同列に扱うこと
について、海洋生態学に詳しい識者は提言に対し「短絡的で根本的解決には到底至らない」
と指摘している。


提言は「琉球列島におけるジュゴン個体数の減少と人間活動」と題した報告書の中でまと
められていた。サンゴ礁学会としての公式の見解ではなく、学会内の発表となっている。
提言をまとめたのはサンゴ礁学会会員を含む5人で、うち4人は環境監視等委員会の委員も
務める。提言者の1人、京都大学フィールド科学教育研究センターの荒井修亮氏は「トキも
中国からの導入で繁殖できたし、海外でもオオカミやヒョウなど成功事例はある」と述べ、
導入案の有効性を主張する。また、環境監視等委員会の目的は「あくまで工事を中止するた
めではなく、いかに最大限の環境配慮をするか検討するものだ」と話した。


報告書で識者らはジュゴンの個体数が激減し、現在は本島北部にしか生息していない理由
の一因に、1970年代以降に加速した本島中南部沿岸での開発行為を挙げていた。海洋生態
学に精通する向井宏北海道大学名誉教授は「委員は開発行為がジュゴンに与える影響を熟
知した上で、埋め立て工事のお墨付きを与えるつもりか」と述べ、移設ありきの保護措置の
提言を批判した。また、向井名誉教授はジュゴンが好んで利用する海草藻場は限定的で、
その重要な地点の一つが辺野古・大浦湾だと指摘。「いくら藻場を植え付けたり海外から
ジュゴンを連れて来たりしたとしても、そこに豊かな環境がなければいずれは滅びるのは
明白だ」と述べ、科学的根拠や実効性の乏しい助言を呈す環境監視等委員会の資質に疑問
を呈した。
今回の提言について、沖縄防衛局は「あくまで委員の先生方の見解であり、防衛局として
は今後も指導を受けながら勉強したい」と話している。


《辺野古着工後、未確認》『ジュゴン外部導入提言』
〈琉球新報2017年12月17日 33面〉


かつては県内全域に380頭ほど生息していたとされる国指定天然記念物のジュゴンだが、現
在は辺野古・大浦湾に生息する個体A、B、Cの3頭のみと推測されている。2015年6月以降、
周辺海域では個体Cの姿が一度も確認されていない。辺野古新基地建設工事に際し防衛局が
設置した環境監視等委員会の中で、ある委員が不明のジュゴンについて「工事とは全く関
係ない現象だと考えてよい」と発言し、防衛局もこれを正式な見解として結論付けた。
大浦湾周辺でジュゴンが確認されなくなった2015年以降の時期は、米軍普天間飛行場の名護
市辺野古への移設作業の一環で、大浦湾内にコンクリートブロックが投下された時期とほぼ
重なる。このため、環境団体などは工事が影響しているとみている。
一方、辺野古の制限区域内では、絶滅の恐れが指摘されるオキナワハマサンゴや、ヒメサン
ゴの群体も見つかっている。

防衛局は保全措置として類似環境への移植を提示するが、研究者などからは人為的な移植の
限界を指摘する声もある。サンゴの生物学に詳しい大久保奈弥東京経済大学准教授は「何百種
類もいるサンゴの生育環境はそれぞれ異なるが、それらを調べることもなくサンゴが移植され、
多くが死んでいる。サンゴもジュゴンもまずは生育環境の解明と復元が第一だ」と指摘した。

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