2017年11月21日火曜日

奄美でも低空飛行訓練

《奄美でも低空飛行訓練》環境報告書に記載なし〈沖縄タイムス2017年11月20日 2面〉


昨年12月に普天間飛行場所属の輸送機MV22オスプレイが名護市安部の海岸に墜落した事故で、米軍が公表した事故調査報告書と付属資料から、米海兵隊が奄美大島上空で低空飛行訓練を実施していることが、19日までにわかった。この低空飛行ルートは普天間配備に伴う米軍作成の環境審査報告書(レビュー)に明記されていないが、恒常的に訓練してる可能性もある。米軍の活動を監視する市民団体リムピースの頼和太郎編集長が分析した。


【普天間所属オスプレイ】


事故調査報告書には「奄美低空飛行ルートを高度500フィート(約152 m)、 速度240ノット(時速444キロ)で飛行してた」と記述されている。 奄美上空で訓練を実施した事実は明らかだが、ルートの詳細は示されていなかった。
頼氏は、当日の事故機を含むオスプレイ2機の機首の向きや飛行距離、直線区間ごとに記録した資料を分析。普天間を離陸後、通過した地点を線で結び、奄美大島上空に低空飛行ルートが設定していることを見つけた。
事故機は奄美大島の南西から低空飛行ルートに入り、反時計回りに約28分で2周した後、ルートを抜けた。低空飛行ルートは奄美大島の西半分と一部海上を通ってる。高度は海上で500フィート、陸上で地上から500フィートを飛んでいたことが分かるという。
奄美大島上空で最も高く飛んだ地点は1980フィート(約603 m) 近くに奄美最高峰の湯湾岳(標高684 m)があることから、山頂より80 mほど低く飛んでいたとみられる。
米軍の環境レビューによると、オスプレイは山口県岩国基地と静岡県のキャンプ富士を拠点に、六つの訓練ルートで低空飛行訓練すると明記し、うち一つは奄美諸島からトカラ列島に至る「パープル」と呼ばれるルートだが、奄美大島上空は含まれていない。
事故機の当日の飛行計画は奄美大島で低空飛行訓練した後、キャンプ・ハンセンやシュワブで夜間着陸訓練を繰り返し、沖縄本島の東海域で空中給油訓練することになっていた。頼氏は複数の訓練を組み合わせるために、沖縄本島周辺に低空飛行ルートが必要で、新たに設定したのではないか。米軍が都合よく利用できるだろう」と話した。
低空飛行ルートを設定したかどうかについて、沖縄タイムスは10月26日、在米海兵隊に質問したが11月19日までに返答はない。


【根拠規定なく 区域外で訓練】
奄美大島上空を含め、オスプレイの低空飛行訓練ルートは、そもそも日本が米軍に提供してる施設・区域ではなく、また、米軍が提供施設・区域の外で訓練できる根拠は、日米地位協定などで明確な規定はない。日本政府は、日米安保条約の目的達成のため、即応体制を整える観点から、低空飛行訓練を含む必要な訓練を施設・区域の外で実施することを「当然の前提」として解釈してるが、「説明が不十分」との批判も多い。
安保条約では、日本が施設と区域を提供し、米軍が使用することを認めるが、施設・区域の外での訓練に関する規定はない。地位協定も、米軍は施設・区域の間や日本の港、飛行場との間を移動することができると定めるが、施設・区域外での訓練については明記されていない。
政府は2013年の福島瑞穂参議院議員の質問主意書への答弁書で「安保条約は、その目的達成のため、米軍が軍隊としての機能する機能に属する諸活動を一般的に行うことを当然の前提としている」とし、低空飛行訓練はその諸活動に含まれると説明している。
さらに、地位協定は実弾射撃訓練のように本来施設・区域内での実施を想定している活動を除き、施設や区域の外で訓練することを認めてると解釈し、施設・区域の外での訓練を容認する姿勢だ。
軍隊の駐留を認める以上、軍隊としての諸活動を当然に認めるという考え方だが、法律家の間でも「提供施設・区域の中で成り立つ解釈であり、その外で訓練することを認める根拠にはならない」と批判が多い。
県は今年9月に日米両政府へ提出した地域協定の見直し要請書の中で、「演習または訓練については、提供施設・区域内において行われるべきである」と求めている。

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