2017年11月21日火曜日

「核持ち込み、日本本土も」

《核持ち込み「本土も」》米、沖縄返還時に内部検討〈琉球新報2017年11月20日 3面〉


1969年の沖縄返還交渉の過程で、有事の際に日本本土へ核兵器を持ち込むことを日本側と合意できないか、米政府が内部で可能性を探っていたことが19日、機密解除された米公文書でわかった。最終的には日本側に提示しなかったが、米軍統治下の沖縄で米軍が享受していた自由な基地使用権を、沖縄返還を契機に日本本土に拡大する思惑があったことが浮き彫りになった。


【機密解除文書で判明】
沖縄返還では結局、日本復帰後の沖縄への核再持ち込みを認める密約が結ばれたことが分かっているが、米国立公文書館で今年9月に文書を入手した我部政明琉球大教授は「米側が当時、沖縄だけでなく日本本土への持ち込みも認めさせようと考えていた事実が判明するのは初めて」と指摘している。
69年6月26日付の国務省の極秘文書によると、同月初旬の日米外相会談で、同年11月に見込まれていた沖縄返還合意時の日米首脳共同声明案を愛知揆一外相が提出したことを受け、米政府は対案を検討した。
「米側の要望を全て盛り込んだ」声明案の中に、極東有事の際に日本全土への核持ち込みを認める条項を明記。同時にこの案を日本側が表だって受けれる可能性は低いとみて、付属文書として秘密合意を作るという「日本が受け入れやすい」別の案も用意した。
秘密合意案は沖縄返還後に開かれる日米安全保障協議委員会の合意議事録の形式で、日本の外相が駐日米大使に対し、極東有事が起きた際は事前協議に「迅速かつ好意的に対応する」として、日本本土への核持ち込みも容認すると解釈できるやり取りを記していた。
また朝鮮半島と台湾の有事の際、米軍が事前協議を行わずに在日米軍基地を使用することを認めるとしていた。


【半世紀前の思惑 現実味】揺さぶられる非核三原則
有事の際、日本本土への核持ち込みを米政府が模索していたことは、東アジアの要衝として在日米軍基地の最大限の活用を図る米側の基本戦略の原点と言える。日本反核感情を盾に米側の要望を食い止めてきたが、最近の北朝鮮の脅威は非核三原則の国是を揺さぶり、半世紀前の米政府の思惑に現実味を与え始めている。
米政府筋は、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発などを急ぐ中、日韓に対する米国の拡大抑止力の強化が必要だと指摘。具体策として核兵器搭載が可能な戦闘機の飛来・配備による「能力の誇示」を挙げる。
10月下旬に航空自衛隊百里基地(茨城県)で予定された航空観閲式では米空軍のB2戦略爆撃機が初めて公に日本上空を飛行する「サプライズ」を用意。悪天候で観閲式は中止されたが、北朝鮮への牽制と同時に「核が積める航空機が飛んだ場合の世論の反応を見る」(日本政府関係者)という”核ならし”の思惑もあった。
自民党の石破茂元幹事長は「米国の核で守ってもらうといいながら、日本国内に置かないというのは議論として正しいのか」と公言。国内の核配備容認に踏み込む主張も目立つようにより、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」の三原則を脅かしつつある。


【米の対日要求 中核示す文書】
〈我部政明琉球大学教授の話〉
在日米軍基地への核兵器持ち込みや自由使用が、沖縄返還に際しての米国の対日要求の中核であることを明快に示す文書だ。沖縄での軍事権に関し、施政権返還による変化を認めない姿勢が貫かれており、日本全体に拡大できると解釈している。文書は日本側に提示されなかったが、米主導の交渉枠組みの原型となった。沖縄の米軍基地が東アジアの安全保障に主要な貢献を行っているという米側の論理を共有してた日本は、沖縄への核再持ち込みを容認する密約を結び、返還合意時の日米共同声明と佐藤栄作首相の演説で基地の自由使用を請け負うことで、米の要求を実質的に実現した。(ワシントン共同)


【日米訓練に核搭載型機】B52、8月に日本海で
核兵器の搭載が可能な米空軍のB52戦略爆撃機が8月、日本列島上空を横断し、航空自衛隊のF15戦闘機と日本海上空で共同訓練をしていたことが19日、政府関係者への取材で分かった。日本海上空での空自戦闘機とB52との訓練が公になるのは初。日米が一体となり、朝鮮半島有事を念頭に訓練を繰り返している実態が明らかになった。
政府関係者によると、日本政府は「非核三原則」を踏まえ、訓練前に核を搭載しないことを確認した。B52は8月、太平洋側から東北付近の上空を西に横断し、日本海でF15と共同訓練を実施。編隊で飛行する手順の確認などをしたと言う。
空自戦闘機と米軍のB1戦略爆撃機は九州周辺で頻繁に共同訓練をしており、一部は公開されている。B1はかつて核を搭載したが、1990年代に米軍の核の運用計画から外されている。
B52と空自戦闘機との 訓練は公表しておらず、政府関係者は「訓練全てを公表すればいいというものではない。核兵器を搭載できるB52が接近したことがわかれば、北朝鮮は強いプレッシャーを受ける」と話している。


【B52戦略爆撃】

大型で核兵器を含む様々な種類の爆弾を搭載できる米空軍の戦略爆撃機。給油しないで約14000キロを飛行できる。初型機が1954年に初めて飛行。ベトナム戦争や湾岸戦争、イラク戦争でも使用された。2040年代まで運用される見通し。

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