2017年11月18日土曜日

基地があるゆえ

《基地があるがゆえ》過重な負担浮き彫り  〈琉球新報2017年11月17日 30面〉

県民に大きな衝撃を与えた米軍属女性暴行殺人事件の裁判員裁判が始まった。復帰45年となった今も日米地位協定の抜本的改定はかなわず、米軍基地の縮小も進まない。被害者の父親をはじめ多くの県民が「基地があるゆえ」と声をそろえた今回の事件は、沖縄が抱える過重な基地負担を改めて浮き彫りにした。
証拠によると、ケネス・フランクリン・シンザト(旧姓ガドソン)被告は被害者の死体を入れたスーツケースや犯行時に着ていた服を勤務先であるキャンプ・ハンセン内のごみ捨て場に捨てたことが明らかになった。
2013年に米兵2人が集団女性暴行致傷の罪などに問われた裁判員裁判では、犯行の動機について「暴行しても捕まらないと思った」と述べるなど、米軍基地運用の在り方や日米地位協定による特権意識が犯罪を助長している側面を浮かび上がらせた。
今回の事件でも動機に注目が集まった。被告人質問で、被告が供述を拒否したため基地内で捨てた理由や犯行に至った経緯は直接語られず、事件の全容が明らかになることは難しくなった。しかし、基地が証拠隠滅の場所となっていた可能性は否定できない。
公判で弁護人は事件と反基地感情を混同しないよう裁判員に呼びかけた。被告の人権を守るための発言だが、逆に県民が深刻な米軍基地被害を受けている現状を鮮明にしたと言える。

《黙秘は県民へ不誠実》高里鈴代氏「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」共同代表

検察官の詳細な現場状況の説明に彼女の叫び声が聞こえてくるようだった。
弁護人は「一人の人間として被告を見るべきで、米軍基地の問題ではない」と述べたが、事件は米軍基地の存在と無縁ではない。(被告が被害者の)ひざの裏や首の後ろを狙って刺したのは「敵を完全に弱らせる」という米軍兵士時代に習得した訓練ではなかったか。検察の陳述で「スラッパーという鉄のと鉛でできた音の立ちにくい棒で襲った」と言っていたように、その武器を準備し、使ったことや、女性の遺体を運んだスーツケースを基地内で捨てたことなどは、米軍経験者や米軍属でなければできないことだ。
準備があまりに用意周到なことも気になった。本当に初犯なのだろうか。実は前にも成功例があるのではないかとさえ感じさせられた。

被告の黙秘は、県民の「真実を知りたい」という声に応じておらず不誠実だ。法廷で弁護士が読み上げた被告の陳述は、本当に自己弁護的で謝罪もなかった。弁護士が「被告を一人の人間として見るべき」と言うならば、被告の生い立ちや前歴がなかったのか、除隊のになったという軍歴など、本人がなぜ犯罪に至ったのか徹底的な究明が必要だ。

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