2017年11月22日水曜日

在沖米軍外出禁止、日本全体に禁酒令

《在沖米軍 外出禁止》日本全体に禁酒令 四軍調整官が謝罪
〈琉球新報2017年11月21日 1面〉

【米兵飲酒死亡事故】
翁長雄志知事は20日午後、在沖米軍トップのローレンス・ニコルソン在沖米四軍調整官と県庁で会談し、19日の米海兵隊員による飲酒運転死亡事故について「綱紀粛正、再発防止に努めると言っても、県民は疲れ果てて何ら信用できない。とても良き隣人とは言えない」と批判した。
ニコルソン氏は「これまで改善してきたが努力が足りなかった。心からお詫びする」と謝罪した。在日米軍は20日、事故を受け在日米軍人の酒の購入や飲酒を全面的に禁止したと発表した。沖縄では基地と住居の移動を除き外出も全面禁止した。

【知事「何ら信用できず」】
知事の抗議に先立ち富川盛武副知事は20日午後、川田司沖縄担当大使と中嶋浩一郎防衛局長を県庁に呼んで抗議し、米側に再発防止策などを働きかけるよう求めた。富川副知事は「あってはならず人命が失われ改めて憤りを禁じ得ない」と批判した。
さらに「公務外であるのにも関わらず、なぜ公用車が運転に使われたのか。大きな疑問を持っている」と米軍の公用車管理の在り方に疑問を呈した。被害者への迅速な補償も求めた。中島局長は「(補償は)まず親族に接触してできるだけしっかり対応したい」とした。
知事と会談したニコルソン氏は、県警の捜査への協力を約し「非常に残念で悲しく言葉では言い表せない。米国民を代表して哀悼の意を被害者と家族に表したい。これまで改善してきたが、努力が足りなかった。心からお詫び申し上げる。基地があるが故の影響を削減していく」と謝罪した。会談後、記者から公務外で公用車を使った経緯を問われ「調査中」と述べた。
在日米軍の飲食禁止令の期間は「別途、通知があるまで」と明記していない。近く新たな外出・飲酒規制(リバティ制度)を発出するまでの一時的措置とみられる。在日米軍は今後「責任あるアルコールの摂取」などに関する研修を実施する。沖縄での飲酒や外出の全面禁止措置は、同研修などを経た上で緩和される可能性が高い。

《知事「基地分担を」》〈琉球新報2017年11月21日 2面〉

【副知事「悪質な事案」】沖縄大使らに迅速補償訴え

19日早朝に起きた米海兵隊による飲酒運転死亡事故について富川盛武副知事は20日、外務省沖縄事務所の川田司沖縄担当大使と沖縄防衛局の中嶋浩一郎局長を県庁に呼び、抗議した。富川副知事は「極めて悪質な事案。尊い命が失われたことに強い憤りを禁じ得ない」と述べ、遺憾の意を表明した。
富川副知事が「一番心配なのは被害者の方への補償。ぜひとも迅速な対応をお願いしたい」と訴えたのに対し、中嶋局長は「まずは親族の方にお会いさせて頂いて、しっかりと対応したい」と述べ、国として果たすべき責任について言及した。
川田沖縄担当大使は事故後「ニコルソン四軍調整官に対して抗議し、再発防止と綱紀粛正を要求した」と明かした。
また、ニコルソン氏からは謝罪の言葉があったと話した。

【県内各政党 国に抗議】「公用車使用、原因究明を」
米海兵隊による飲酒運転死亡事故を受け、県内政党が20日、相次いで国に抗議した。公明党県本は外務省沖縄事務所、共産党県委と日本維新の会県総支部は沖縄防衛局に抗議した。議員からは「もう二度とこのような事故を起こさないでほしい」、「なぜ公用車を持ち出せたのか明らかにして欲しい」などの声があがった。
公明党沖縄方面本部と党県本は、外務省沖縄事務所で川田司沖縄担当大使に速やかな事故の原因究明や遺族への補償などを求める申し入れ書を手渡した。川田大使は「あってはならない言語道断の事故であり、大変遺憾に思ってる。綱紀粛正と再発防止策を強く求めていく」と答えた。
金城勉県本代表は「事件・事故が起こるたびに申し入れてきたが、それが生かされて残念だ。速やかに原因究明し、再発防止策を求めて欲しい」と申し入れた。
共産党県委の真栄里保基地対策責任者らは沖縄防衛局の鍋田克己管理部長次長に、今後も米兵の基地外の外出を禁止することや在沖米軍基地の撤去を求めた。真栄里しは「最も抜本的な解決は基地の撤去だ。これ以上県民の命が失われないようにして欲しい」と求めた。鍋田管理部次長は「われわれも遺憾だ。リバティ制度が終わり、元に戻るのでは意味がない。厳しくチェックしていく」と答えた。
日本維新の会県総支部の當間盛夫幹事長らは「なぜ公用車だったのか。また飲酒運転について、基地のゲートのチェック体制もどうだったのか」と問い、早急に明らかにし、被害者への完全補償するよう求めた。
中嶋浩一郎局長は「賠償は責任を持って当たる。飲酒絡みの事故が根絶されていない。米側に強く働きかけていき、徹底させたい」と答えた。

【禁止令 県冷ややか】飲酒米兵追突『「ゼロ宣言直後」に事故』

米海兵隊による飲酒死亡事故から一夜明け、在沖米軍トップが県庁に赴き謝罪した。ニコルソン四軍調整官は何度も「謝罪」という言葉を口にし、再発防止に全力を尽くす姿勢を示したが、効果には懐疑的な見方が広がる。県は抜本的な対策として米軍基地の全国での負担を求めたが、米側の返答なかった。日本政府も踏み込んだ姿勢を示さず「遺憾」との言葉を繰り返すのみだ。

「基地内に飲酒運転を禁じる看板を掲げ、テレビCMを流してる。飲酒運転の数は減っている。不祥事をゼロにすることが私のゴールだ」16日、在沖米海兵隊の司令部があるうるま市のキャンプ・コートニーでの記者会見で米軍の事件・事故防止の取り組みを強調したローレンス・ニコルソン四軍調整官。「NOT ONE DROP(一滴たりとも飲んだら乗るな)」。基地内に掲げているというこの言葉を何度も繰り返した。それからわずか3日。海兵隊員の飲酒による交通死亡事故で県民の命を落とした。飲酒運転防止対策の効果に自信を深めていただけに米軍内にも衝撃が走った。
米軍は事故発生日のうちに、翌日県庁訪れる旨を県に伝えた。米軍の危機感を反映するかのように、当初は在沖米海兵隊ナンバー2のポール・J ・ロック 准将が県庁を訪れる予定だったが、当日、在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官に変更した。エレンライク総領事も同席し、2人そろって知事に何度も頭を下げた。

【どうせ期間限定】
米軍は事故を受け、県内に駐留する全ての兵士に外出禁止と基地内外での飲酒禁止を発令。迅速な対応を示した格好だが、県庁内の受け止めは冷ややかだ。
「緊急処置として取らざるを得なかったのだろうが、どうせ期間限定でしかない」。県幹部は禁止令の効果は限定的だとみる。
「正直、もう基地から出るなと言いたい」。別の幹部もこう本音をつぶやいた。
知事は米軍への抗議の席で、今回の事故だけでなく東村での大型ヘリ炎上事故、昨年の名護市安部でのオスプレイ墜落事故、そして昨年4月のうるま市での女性暴行殺人事件にも言及した。
そして「ぜひニコルソンさんからも日本政府に対し『沖縄には米軍基地が多すぎる。これでは犯罪は軽減できない。日本全体で基地を負担して行こう』と提案してほしい」と求めた。事件・事故を防ぐ”抜本的”な対策は、全国で基地負担を分担することだという県側からのメッセージだった。

【溝深く】
「累次にわたり再発防止と綱紀粛正の徹底を申し入れてきたにもかかわらず、事件が発生したことは極めて遺憾だ」。事故を受け、菅義偉官房長官は従来より強気な姿勢を示して見せた。今後も事故の詳細が判明し次第「適切に対応していく」とさらに踏み込んだ対応に含みをもたせた。
ただ、今回の事故では日米地位協定など日米関係にかかわる問題は現時点では出ていない。防衛省関係者も菅氏の発言は今後、「何らかの問題があった場合」に対応すると表明したものに過ぎないと解説する。菅氏の強気な態度は捜査上の障壁がないことから生じる「自身」に基づく”虚勢”にとどまる 可能性もある。
日本全国での米軍基地の分担を求める県側と、問題が起こったら対応するという事後処にとどめようとする政府。両者の溝が改めて浮き彫りになっている。

【基地反対再燃も】米メディア一斉報道 (ワシントン発)
米主要メディアは19日、那覇市で起きた米海兵隊員による飲酒運転死亡事故と、在日米軍人を対象にした基地内外での飲酒禁止を一斉に報じた。2016年4月に発生した米軍属女性暴行殺人事件の裁判や、同3月の米海軍兵による女性暴行事件などにも触れ、ABCテレビ(電子版)は「この事故は、沖縄での米軍プレゼンスに対する反対を再燃させる可能性がある」などと伝えた。
ニューヨーク・タイムズ(電子版)は「沖縄に駐留する米兵の事件は、日米の緊張の源となってきた」と伝え、ワシントン・ポスト(同)は翁長雄志知事の「毎回同じことの繰り返しで言葉がない」という発言を紹介した 。AP通信は「地元住民が米兵の犯罪に対する懸念を示してきた沖縄で、米軍のプレゼンスに対する反対が強まる可能性がある」と指摘。NBCテレビ(電子版)は在沖米軍基地に対する県民の抗議についても伝え、昨年6月の県民大会の動画も載せた。
米軍事専門サイト「ミリタリー・ドット・コム」は、沖縄では米兵の飲酒絡みの事件・事故に伴う飲酒禁止がほぼ慣例になっており、2016年だけで少なくとも3件の飲酒絡みの事件・事故が発生したと指摘。特に、米軍属女性暴行殺人事件の公判中に発生した今回の事故は「米軍関係者にとって特に悪いタイミングで起こった」と報じた。

【菅氏「極めて遺憾」】事故詳細踏まえ対応
菅義偉官房長官は20日の会見で、19日早朝に起きた米海兵隊による飲酒運転死亡事故について「累次にわたり、この種の事故の再発防止と綱紀粛正の徹底を申し入れてきた。にもかかわらず、本件事件が発生したことは極めて遺憾だ」と述べた。
菅氏は防衛、外務両省が在日米軍や駐日米国大使館に遺憾の意を伝え、綱紀粛正、再発防止を求めてると説明。同時に遺族への誠意ある対応を申し入れているとした。
また県警の捜査を踏まえ、事故の詳細が明らかになった場合は「それを踏まえて適切に対応していく」とした。同時に事故を起こした米兵が公用車を運転しながらも制服を着てなかったため、規則を順守すべきとの姿勢も示した。

【《もう勘弁してくれ》米兵飲酒死亡事故】米へ抗議『知事、表情厳しく』

「もう勘弁してくれ」。米海兵隊員による飲酒運転死亡事故から一夜明けた。20日、目の前に立つ在沖米軍トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官に対し、翁長知事は率直な言葉を次々とぶつけた。
「何も信用できない」と抗議する知事に対し、ニコルソン氏は終始、厳しい表情を崩さなかった。

県庁6階の知事応接室。報道陣の間から翁長知事が姿を見せると、一足先に入室していたニコルソン氏とジョエル・エレンライク総領事が頭を下げて迎えた。
知事が用意した紙を読み上げる。「『綱紀粛正、再発防止に努める』と言っても、県民は疲れ果てて何の信用もできない。とても『良き隣人』とは言えない。県民は『もう勘弁してくれ』という気持ちだ」
知事とニコルソン氏の距離は1 m ほどで、傍らに通訳がたった。知事の発言に時折、小さく頷いたニコルソン氏。知事が抗議文を手渡すと、お辞儀して受け取った。
直立したニコルソン氏は「様々な取り組みで改善してきたが、努力が足りなかった」と述べた。「心からお詫び申し上げる」と深々と頭を下げると、カメラのフラッシュが一斉に光った。
「私たちの気持ちを聞いてもらいたい」。着席後、そう強調した翁長知事は沖縄戦以来、強いられ続ける沖縄の苦難に言及した。時に「返事はいらない」と前置きし、「県民からしたら『もう嫌だ』と。この気持ちはどこに発散すればいいのか」と問いかけた。
ニコルソン四軍調整官はメモを取ることもなく知事の言葉を聞き、「基地負担軽減の努力」を強調した。同氏が深く息を吐いた後、会談は終わった。予定の30分間を10分超過していた。エレンライク氏は一言も発することなく、退室する知事の後ろ姿を見やった。

【防犯カメラに米軍トラック】きょう容疑者送検
飲酒運転していた米海兵隊員の米軍公用車2トントラックと衝突し、軽トラに乗っていた那覇市の会社員、平良英正さん(61)が死亡した事故で、那覇市内の事故現場周辺に設置された防犯カメラの映像によると、事故発生時間帯に周辺の車より速い速度で国道58号線を走行する米軍公用トラックとみられる車両が映っていた。
那覇署は20日、引き続き自動車運転処罰法違反(過失運転致死)と道路交通法違反(酒気帯び運転)の容疑で逮捕していた米海兵隊牧港補給地区所属の米海兵隊上等兵ニコラス・ジェームズ・マクリーン容疑者(21)から事情聴取した。同署は21日にジェームズ・マクリーン容疑者を那覇地検に送検する予定。

【飲酒制限では甘い】09年ひき逃げ被害 神山さん強調
2009年4月に那覇市松山で米兵が男女3人をひき逃げした事故で大けがを負った神山優樹さん(32)=南城市、会社員=は今回の飲酒運転死亡事故で在日米軍が在日米軍人の飲酒を制限する措置を発表したことについて「米軍の考え方が甘い。酒の購入や飲酒を制限したぐらいでは良くならない」と強調した。
09年4月4日、亀山さんは知人の2人と那覇市松山交差点で青信号の横断歩道を歩行中、海兵隊の米兵が運転する車両にはねられた。突然、大きな鉄の塊に殴られたような感覚で飛ばされ、地面に叩きつけられた。骨盤骨折や恥骨骨折、全身打撲などを負い、職場に復帰するまで約半年を要した。
当時、ひき逃げした米兵は事件直後、米軍キャンプ・ハンセン内に逃げた。県警がが任意で事情聴取できたのは翌日以降で、時間経過により飲酒運転かどうか確認できなかった。繰り返される米兵の事件・事故に対し「罪を犯しても逃げられると思っているのではないか。その意識が問題だ」と根底に日米地位協定があるとの認識を示した。
日米地位協定の改定や基地撤去を求めても、実現には時間がかかるとも指摘し「外国人に酒を提供する時には、店として身分証を提示してもらう取り組みをした方がいい。沖縄側ができることから始めないといけない」と提言した。

【Yナンバー車 落書きされる】

県警は20日、北谷町北前や宜野湾市大山で19日夜から20日朝にかけ、米軍関係者が使用する車両30台やアパート、マンションなどの外壁にラッカースプレーのような塗料で落書きされているのが見つかったと発表した。29台はYナンバーで、1台は沖縄ナンバーだった。車両に「Y」などの文字が書かれていた。那覇市では19日、米海兵隊員が飲酒死亡事故を起こした疑いで逮捕されている。県警は器物損壊事件として捜査してる。

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