2017年11月19日日曜日

遺族、極刑求める

《命をもって償って》《苦しみずっと胸に》
米軍属女性暴行殺人第2回公判『遺族、極刑求める』〈琉球新報2017年11月18日 1面〉

2016年4月に発生した米軍属女性暴行殺人事件で、殺人や強姦致死などの罪に問われた元海兵隊員で事件当時軍属のケネス・フランクリン・シンザト(旧姓ガドソン)被告(33)の裁判員裁判第2回公判が17日、那覇地裁(柴田寿宏裁判長)で開かれた。前日の初公判に続きケネス被告は「黙秘権を行使する」と供述を拒否した。一方、被害者の父親は法廷で「遺族は極刑を望みます。命をもって償ってください」と述べた。

【被告再び黙秘】
母親も証言台に立ち、代理人の代読で意見陳述した。母親は「いまだに心の整理がつかない。娘は恐怖におびえ、痛み、苦しみの中でこの世を去りました。
悔しいです。無念で胸が張り裂ける思いです。娘の命を奪った殺人者は生かしておくべきではありません」と裁判官らに訴えた。
ケネス被告はこの日も二度被告人質問を受けたが、弁護側と検察側の双方の質問に黙秘を貫いた。
公判では被害者の遺体を鑑定した法医学の医師の証人尋問も行われた。殺意の有無が争点となっているが、医師は犯行状況と死因の関係性について遺体が白骨化しているているため「裏付けられない」と述べた。その上でケネス被告が被害者の頭を皮で覆われた金属製の打撃棒で殴ったり首を絞めたりしたほか、ナイフで首を後ろから刺した行為などについて「(受けた人は)死に至る可能性がある」と指摘した。
この日の証拠調べを終えた。次回24日に論告求刑公判が開かれ結審して12月1日、判決が言い渡される。

《被告 表情変えず》軍属殺人 第2回公判 〈琉球新報2017年11月18日 33面〉

「黙秘権を行使する」米軍属女性暴行殺人事件で17日、ケネス・フランクリン・シンザト(旧姓ガドソン)被告(33)の第2回公判が開かれた那覇地裁。検察側から「被害者遺族に言っておきたいことはあるか」と問われたケネス被告は16日に続き黙秘をした。検察側の席にいた被害女性の父親は真っすぐ天井を見つめ、傍聴席にいた母親は「はぁ・・」と声を出しハンカチに顔をうずめた。

【席、証言台で頬づえ】
法廷内のあちこちでむせび泣く音が響いた。「命をもって償って」「心は地獄の中で生きている」-。黒い服に身を包んだ両親は何度も涙を拭い、まな娘を失った心情を吐露し極刑を求めた。
ケネス被告は初公判に続いて半袖シャツ、紺色の長ズボン、はだしに黒サンダル姿で、証言台でも被告人席でも頬づえをついていた。英訳される審理内容をイヤホンなどを通して聞き入った。
母親は事件直後、仕事を辞めるほど精神的に動揺していたと言い、現在も憔悴している様子だった。母親と共に証言台に立った遺族側の弁護士が、母親に代わり意見陳述を読んだ。母親は涙を流しながらケネス被告を見つめた。ケネス被告は時折うつむき、母親に目を向けた。複数の裁判員も母親の意見陳述に涙した。
父親は意見陳述で多くを語らずも、裁判長を見つめてはっきりと極刑を望んだ。
検察官が読み上げた供述書では、生前の娘とのやり取りなどが詳細につづられていた。最後に会ったのが成人の日で、娘の晴れ姿を携帯電話で撮影したという。「体に気を付けてよ」と声を掛け握手を交わしたが、同じ手を再び握ることはなかった。
「わが子が娘と同じように殺害され、見知らぬ山林に捨てられたらどういう気持ちになるのか考えてほしい」。供述調書を読み上げている検察官を通して、幼い子がいるケネス被告に語り掛けたが、反応はなかった。父親は供述が読み上げられている間、終始涙を流し、うつむいていた。
ケネス被告の表情は、法廷を出ていくまで変わることはなかった。

《犯行状況把握 裏付けられず》鑑定医が証言
女性の遺体を鑑定した琉球大の二宮賢司医師は、証人尋問で犯行状況について「(遺体が)ほとんど骨しか残っていないため鑑定では裏付けられない」とした。頭蓋骨には骨折はなかったと証言した。「暴行時に女性が転倒し、頭を強く打ったことが死亡につながった可能性がある」という弁護側の主張には「酔った人がコンクリートに頭を打ち付け死亡した事例は存在する」としながら「草むらや土の柔らかい場所では考えにくい」と答えた。
ケネス被告が女性の遺体を遺棄する際に「彼女から音が聞こえた。生きているかと思い、ナイフで足などを刺して確認した」と供述していることに、弁護側が死亡した人から音が出るかを聞いた。二宮医師は「遺体の胃の中の空気が、動かされた時に口から出て音が出る可能性はある」と答えた。

《遺族「許せない」》「奪った命返して」父、絶望と動揺訴え
〈琉球新報2017年11月18日 32面〉

「かわいかった娘を返してほしい。奪った命を返してほしい」。17日に開かれた米軍属女性暴行殺人事件の第2回公判で、父親の供述調書が読み上げられた。娘への愛情や行方不明になった不安感、命を奪われた絶望感、被告に対する処罰感情などが伝えられた。
調書によると、父親は昨年4月29日午後4時ごろ、母親から行方不明になったことを知らされた。すぐに自宅を出て、その日の夜から懐中電灯を持って娘の自宅付近やウォーキングをしていた場所を歩いて捜しまわった。しばらく自家用車で寝泊まりしながら捜した。
しかし、「必ず生きて帰る」と信じた望みはかなわなかった。5月19日警察から「娘さんと思われる遺体が見つかった」という連絡が入り「頭が真っ白になった」
解剖を終えた娘の死体を引き取りに施設に行った。白骨化した娘の変わり果てた姿に我を忘れ「守れなくてごめんね」と叫んでいた。
初めての子どもで、明るく育ってほしいと名付けた。未熟児で生まれ、ほかの子より体が小さく心配したが「名前の通り誰からも親しまれる明るい子に育った」と成長を感じていた。
女性は亡くなる約4か月前に成人式を迎えた。振袖を着た娘の姿がうれしくて、写真を撮った。娘と別れる時に「体に気を付けてよ」と声を掛け握手した。口べたで握手することが最大の愛情表現だった。娘は照れくさそうに笑って握手を返した。「それが娘との最後の会話になりました」
事件後の母親はショックが大きく感情の起伏が激しくなり、精神的に動揺し現実を受け入れられない状況になっていた。
調書の中で父親は被告に「自分自身の人生すべてを懸けて償ってほしい」と処罰感情をぶつけた。

《被害者冒涜 反省なく》高里鈴代氏〈基地・軍隊を許さない行動する女たちの会〉
【傍聴記】
公判で意見陳述したご両親の精神的、身体的負担を考えると、とてもいたたまれない。検察官が読み上げた供述調書で、父親は被告に幼い子がいることに触れ「わが子が娘のように殺害され、山林に遺棄されたらどういう気持ちになるのか。被害者の親ならどういう気持ちになるのか」と問うた。
涙を流し、肩を震わせながら証言した両親の思いを被告はどういう思いで聞いていたのだろうか。被告は遺族に対して、反省や謝罪を表明する機会すら、黙秘権を行使した。
被告は公判前、弁護士を通じて米軍の準機関紙「星条旗」に自身の弁明を掲載した。「米国人には思いを伝えたい」という意向だったという。
「星条旗」には「居合わせた彼女が(被害女性)が悪かった」などと、被害女性に責任を転嫁するような表現があった。女性に対する乱暴は女性が抵抗しなければ「合意があった」などと主張され、抵抗すれば今回のように殺害される恐れがある。

被害者を冒涜する、これまでの被告の態度からは罪に対する反省の態度は全く感じられない。被告は自分の行った行為に正面から向き合うべきだ。

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