2017年11月18日土曜日

殺意否認

《元軍属、殺意否認》被告人質問 供述拒む
女性暴行殺人事件『検察、「犯行は計画的」』 〈琉球新報2017年11月17日 1面トップ〉

2016年4月に発生した米軍属女性暴行殺人事件で、殺人や強姦致死などの罪に問われた元米海兵隊員で事件当時軍属のケネス・フランクリン・シンザト(旧姓ガドソン)被告(33)の裁判員裁判初公判が16日、那覇地裁(柴田寿宏裁判長)で開かれた。
起訴事実についてケネス被告は強姦致死と死体遺棄罪は認めたが「殺すつもりはなかった」などと述べ殺意を否認した。弁護側も殺人罪は成立しないと主張した。一方、被告人質問では「黙秘権を行使する」と供述を拒否した。

【きょう第2回公判】

逮捕直後に供述した犯行内容について確認する検察側の質問に、ケネス被告は一貫して答えなかった。逮捕後の捜査段階で供述拒否に転じ、法廷での供述が注目されたが黙秘を続けた。
罪状認否では「殺しもしていない。気絶させてホテルに連れていき乱暴した後に開放するつもりだった。しかし、思い通りに気絶せず計画通りに進めることができなかった」と述べた。
検察側は冒頭陳述でケネス被告が通行中の女性を乱暴した上で殺害しようと考え、鉄と鉛でできた打撃棒やナイフ、スーツケースなどを用意して行為に及び計画的だったと指摘。その後、うるま市で襲う女性を物色。背後から被害女性の後頭部を棒で数回殴り、首に腕を巻き付け絞めたりしたほか、ナイフで首の後ろ付近を刺したとして「殺意が認められる」と主張した。
弁護側は棒で殴ったり、首を絞めたりしたのは気絶させるためで殺意はなかったとし、暴行現場では被害者を抱きかかえ草むらに飛び込んだ際に被害者が地面に頭を打ち付け死亡した可能性があると指摘した。
起訴状によるとケネス被告は16年4月28日午後10時ごろ、うるま市内の路上でウォーキング中の女性(当時20)に殺意を持って頭部を棒で殴った上、両手で首を絞めたり首付近をナイフで数回突き刺したりした。乱暴目的で犯行に及んだが未遂に終わり、一連の暴行で女性を死亡させたとされる。第2回公判は17日午前10時に開廷。被害者参加制度で立ち会っている被害者の父親が意見を述べる。ケネス被告の被告人質問も再度検討する。

《黙秘 真実どこに》元米軍属殺人初公判『法廷に遺族おえつ』
〈琉球新報2017年11月17日 31面〉

おえつが漏れる法廷で、淡々と審理に臨んだ。16日、那覇地裁で始まった裁判員裁判で、起訴内容を一部否認したケネス・フランクリン・シンザト(旧姓ガドソン)被告(33)。残忍な事件はなぜ起きたのか。ケネス被告の発言に注目が集まったが、被告人質問では黙秘し、事件について語ることはなかった。

ケネス被告は午前10時ごろ、半袖の白い無地のTシャツに、黒っぽい長ズボン、黒いサンダル姿で入廷した。時折傍聴席に目をやり、少し緊張した表情、公判中は、肘をついて口元に手を置いたまま、ほとんど身動きせず、モニターに視線を落とした。
被害者参加制度を利用した被害女性の父親は、喪服姿で検察側の席に座り、険しい表情でケネス被告を見つめた。起訴状が朗読されると、傍聴席に座っていた母親はハンカチで顔を覆い、肩を震わせた。
裁判長から認否を問われた際、ケネス被告は少し間を置いた後、用意したメモを読み上げ「被害者を気絶させてホテルに連れていき、乱暴した後に開放するつもりだった」と殺意を否定した。その後の被告人質問では黙秘権を行使し、約5分で終えた。
検察側は、捜査の段階での取り調べでケネス被告が供述した内容を読み上げた。被害女性の首の後ろ付近を刺し、乱暴しようとしたとの自身の供述が明かされると、眉間にしわを寄せて目を閉じた。
一方、弁護側も、ことし4月に作成したケネス被告の供述書を読み上げた。ホテルで乱暴しようとしたが計画通りいかず、被害者が亡くなったことに「私の努力が結果に見合わなかったのが残念だ」と述べた。ケネス被告は耳元に手をやり、イヤホンを何度も直して通訳の声に聞き入った。
傍聴したうるま市の病院職員具志堅さんは(51)閉廷後「被告の態度は、謝罪の気持ちとは裏腹だ。真実が語られず、残念に思う」と述べた。

《被告の足取り 明らかに》
検察側の、弁護側の主張や証拠などから、県警の発表で言及されていなかった事件前後のケネス被告の足取りなどが明らかになった。
双方の冒頭陳述などによると、ケネス被告は恩納村安富祖に女性の遺体を遺棄した後、金武町伊芸のホテルに入りシャワーを浴びて、女性を埋める際に土がついた洋服を着替えた。その後、キャンプ・ハンセン内の職場に行き、女性を運ぶ際に使った黒いスーツケースや着替えた洋服を捨てた。その後、打撃棒を捜すために暴行現場に戻り、打撃棒や女性の鍵、スマートフォンを見つけ、近くの水路に捨てた。
検察側は、ケネス被告のスマートフォン位置情報や職場での無線ネットワークに接続された時間などからケネス被告の足取りを再現した。遺体遺棄後に金武町内のコンビニエンスストアで塩などを購入し、駐車場で自らの身体に振りかける様子を記録したカメラ映像も証拠として提出した。

《供述 信用性で応酬》検察と弁護側、犯行巡り

被告人質問で黙秘したケネス被告、弁護人によると、初公判当日に法廷で語らないことを告げていた。そのため17日に予定していた被告人質問が16日に行われたとみられる。黙秘したことで、検察側と弁護側の双方は手持ちの供述書でケネス被告の供述の信用性を争うことになった。
検察側は検事2人が警察官役と被告役に分かれ、取り調べた際のやり取りを再現するように読み合せた。当時の供述によると事件の日、ケネス被告は女性を襲う目的で一帯をドライブしていた。
犯行に関して、打撃棒で被害者の後頭部を「力いっぱい、5から10回の間の数で」殴ったという。ナイフを使ったのは暴行現場で、首に後ろ付近を刺したと述べた。

弁護側はケネス被告が署名した弁護人作成の供述書を読み上げた。犯行については「力いっぱい殴ってはいない」と話し、「気絶させるために首を絞めた。気絶したと思った」と続けた。死因は倒れた時に「頭を激しく地面にたたきつけられたからだと思った」とした。ナイフで刺したのは遺棄現場だったと答えた。

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