2018年1月2日火曜日

《県、辺野古代替案に着手》新基地阻止向け検証「知事 3月訪米時発表へ」

《県、辺野古代替案に着手》新基地阻止向け検証「知事 3月訪米時発表へ」
〈沖縄タイムス2018年1月1日 1面〉


米軍普天間飛行場の閉鎖、撤去に向け、県が名護市辺野古の新基地建設に替わる独自案の
作成に着手したことが分かった。シンクタンクや研究者の案をベースに代替案を検証し、
2018年度前半の公表を目指し作業を進める。翁長雄志知事は新基地建設阻止を訴えるため
3月に訪米する予定で、この場で県の考え方の「骨格」を発表することも検討している。
普天間問題で県が代替案を策定すれば、県政史上初となる。


県などの関係者が明らかにした。県がベースにするのはイニシアティブ(ND)と、外交、
安全保障を研究する米ジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ教授らの案。共に在
沖米海兵隊のローテーションの変更など米軍の運用を見直すことで、辺野古新基地は不要
との結論を導き出している。
県は従前からモチヅキ氏と基地問題に関し意見交換しており、既にND関係者にも協力を求
めている。モチヅキ氏は1月中旬に来沖する予定で、県は代替案や米軍の運用に関し意見
交換する。
県は、米軍再編後に沖縄に残る第31海兵遠征隊(31MEU)を、在沖米軍が訓練で使用する
強襲揚陸艦がある佐世保基地(長崎県)へ移駐する案など、多方面から検討を進める。
県案決定後には米外交問題評議会(CFR)が発行する専門誌「フォーリン・アフェアーズ」
に投稿し、世界に向け県の考えを発信することも検討している。
県は以前から米政府監査院(GAO)が報告書で辺野古新基地の滑走路に関し「短すぎる」と
指摘している点に着目。今後、米軍にとり辺野古新基地は有用な施設なのか、という点も問
い直し、米国内での再検討や翻意を促したい考えだ。
これまで知事は一貫して代替案は日本政府が示すべきだとの姿勢を示してきた。だが、政府
は「辺野古唯一」の考えを変えず、民意を無視して工事を進めており、県から代替案を示す
ことで「辺野古以外」の議論を活性化させたい意向だ。
翁長知事は辺野古新基地建設反対を訴えて2014年12月に就任後、3度の訪米や国連演説など
を通して新基地建設阻止の考えを訴えてきた。ただ、県の反対の意思は伝わる一方、米側で
は「解決済み」との認識が広がっており、具体的な対案を示すことで新基地建設断念を日米
両政府に迫る狙いがある。


《普天間撤去へ一歩》運用見直し「辺野古不要」新外交イニシアティブ提言
〈沖縄タイムス2018年1月1日 3面〉


県が米軍普天間飛行場の閉鎖、撤去に向けた独自案の策定に動き出す。名護市辺野古への移
設作業を進める日米両政府に対し、「辺野古が唯一ではない」と一石を投じ、国内外の世論
を喚起する狙いがある。シンクタンク「新外交イニシアティブ」(ND)や、米ジョージ・ワ
シントン大学のマイク・モチヅキ教授、ブルッキング研究所のマイケル・オハンロン上級研
究員らは、代替施設の建設を必要としない普天間閉鎖案をまとめている。


新外交イニシアティブ(ND)の提言は、米軍の運用見直しにより名護市辺野古を含め、国
内に新基地を造らず米軍普天間飛行場の返還を可能とするもの。現行の米軍再編後、沖縄に
残る第31海兵遠征隊(31MEU、2千人規模)の拠点を沖縄以外に移すことで、辺野古に新た
な基地は必要なくなるーーとの内容だ。
31MEUは長崎県の佐世保にある海軍強襲揚陸艦に乗り込み、1年の半分以上の期間、フィリ
ッピンやタイなどアジアで実施される人道支援・災害救援活動訓練への参加を任務とする。
提言では、沖縄は海兵隊と船が合流する「ランデブーポイント」(落ち合う場所)でしかな
く、その役割はオーストラリアやハワイでも果たすことができると指摘している。
その上で、31MEUにとって重要なのは、舞台と船との合流の利便性だとし、31MEUの拠点
を沖縄以外へ移した上で、活動を支援するための高速輸送船を日本側が提供することを提案。
「辺野古新基地建設にかかる巨額な財政負担を転用することで、はるかに少ない費用負担で
普天間飛行場の返還が実現可能だとする。
また、31MEUが実施している人道支援・災害救助への自衛隊の積極参加を訴える。自衛隊の
能力を東アジアの人道支援・災害救助に生かすことで各国軍隊との連携を深め、安全保障環
境の改善に寄与すると指摘する。
さらに、海兵隊司令部が東アジアの地震や台風、干ばつなどの災害対策や各種訓練の「調整
役」を担う連絡調整センターを沖縄に設置することを提案。沖縄がアジア諸国の安全保障や
地域の緊張緩和に関する議論の場になることは、戦争で多大な犠牲を払ってきた沖縄の21世
紀にふさわしい姿だとしている。


【佐世保近くに事前集積艦】部隊は米本土から空輸「モチヅキ、オハンロン両氏の普天間閉鎖案」


モチヅキ、オハンロンの両氏は2013年、在沖海兵隊の5千~8千人を残した上で、大半を米本
土へ移駐し、数千人分の武器や弾薬、医療品などを搭載した「事前集積艦」を佐世保基地
(長崎県)の近くに新たに配備する案を発表した。普天間を閉鎖しても、アジア有事への即
応体制を維持できると強調している。
現行で沖縄の海兵隊員を1万人以上の規模で輸送する場合、空輸なら米本土の航空機の応援が
必要で、それとは別に佐世保の揚陸艦4隻で装備品を運ばなければならない。
両氏の案では、米本土の海兵隊員を航空機で直接アジア・太平洋地域に運び、完全装備を積
んだ事前集積艦と現地で合流する方が、時間を短縮できると指摘。
朝鮮半島への配備を1週間以内に完了できる、と利点を挙げている。
米軍普天間飛行場を閉鎖する一方で、沖縄本島北部の既存の基地内に適度な大きさのヘリポ
ートやオスプレイと関連要員を本土の自衛隊基地へ移転、有事や戦争の際に那覇空港まどの
滑走路を使用ーーといった条件を付けている。
日本は辺野古新基地を造る必要がなくなり、その経費で事前集積艦を導入すれば、米側から
の財政負担も減ることから「日米で経費を節約できる」と説明する。
また、辺野古移設では「問題を解決できない」として「政策立案者を新鮮な思考と断固たる
行動に向けさせる最後のきっかけになる」と呼び掛けている。


【海兵隊駐留「政治的事情」】専門家ら抑止力説否定
海兵隊がなぜ沖縄に駐留しているか。その理由について、日米両政府は抑止力や地理的優位
性などを挙げるが、政治家や専門家の間でも否定的な意見が相次いできた。国内に他の受け
入れ先がない、日本政府が見つけ出せないといった「政治的な事情」を指摘する声も根強い。
1996年に米軍普天間飛行場返還で合意したペリー元国防長官は2017年9月に沖縄を訪れ、翁
長知事と面談し、「われわれは沖縄県内への移設でなくていいと強くいったが、日本政府が
駄目といった」と説明したという。
沖縄タイムスの取材にも「(移設先が)必ずしも沖縄である必要はない」と強調していた。
当時の駐日大使だったモンデール氏は04年4月、米国務省付属機関に対し「日本側が在沖米
海兵隊の駐留継続を望んでいた」と振り返っている。
小泉純一郎首相は05年6月、沖縄の負担軽減を「全国民が考えなければいけない」としなが
ら「総論賛成、各論反対。自分のところには来てくれるなという地域ばかりだ」と素直に認
めた。
民主党政権だった12年12月、森本敏防衛相は退任直前の会見で、海兵隊の司令部、地上、航
空、後方支援の各部隊をまとめて配備できれば、沖縄以外への移転も可能との認識を示した。

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