2018年1月17日水曜日

過剰警備断罪に評価

《車両制止違法判決》市民ら「勇気与えた」
〈沖縄タイムス2018年1月17日29面〉

東村高江の米軍ヘリパット建設に反対する関係者への取り締まりで、那覇地裁が県警側の違法性を認めた。高江のほか名護市辺野古の新基地建設現場でも警察官による「強制排除」が日常化しており、抗議する市民は判決を「警察の傍若無人な振る舞いを断じるもので画期的」と歓迎した。一方、県警幹部は「判決を精査したい」と慎重な対応に終始した。

【県警幹部慎重「精査する」】
高江では、工事車両が県道を通るたびに機動隊が集落から県道に出る道を通行規制していた。
高江に住む伊佐育子さん(57)は「朝の通勤、通学の時間に足止めされ、抗議行動に参加しない住民まで迷惑していた」と県警を批判。「自分たちは対応に疑問を持っていたが聞いてくれなかった。県警は判決を受け止め、辺野古での対応についても考え直してほしい」と話した。
抗議行動中に逮捕され、長期勾留された沖縄平和運動センターの山城博治議長(65)は「非暴力で行動しているにもかかわらず、県警の目に余るような過剰警備にさらされてきた人々に勇気を与える判決だ」と評価。「新基地建設問題で行政に迎合するような判決が続いてきた中、市民の声を受け止めてくれた裁判官の判断は画期的」と続けた。
一方、高江や辺野古での警備について、県警はこれまで警察法2条などを根拠に「現場の混乱防止や交通の安全を確保する目的」で現場を規制し、公務執行妨害容疑などで抗議参加者らを逮捕してきた。
ある県警幹部は、判決に「精査したい」と渋い表情。今後の警備体制への影響へについては「判決が即、現場の警備方針に影響するかは分からない」とし、別の幹部は「これからも法令に基づいて対応することに変わりはない。それしか言えない」と話した。

【国民の自由制約 猛省迫る】
東村高江でヘリパット建設に抗議する市民を支援する弁護士の車両通行を2時間以上制止し、ビデオ撮影した県警側の行為を違法と断じた16日の那覇地裁判決は、当時の警備が国民の自由を制約するほど過剰だったと指摘している。法治国家の根幹である司法的統制を軽視した警察の手法に歯止めをかけ、憲法や法令に違反していないか猛省を迫るものと言える。
憲法13条は個人の尊重や生命・自由の権利の尊重をうたっている。これは国民の私生活上の自由が、警察権などの国家権力の行使に対しても保護されると解される。撮影行為については最高裁が1969年12月、「現に犯罪が行われているような特段の事情がない限り、個人の容貌などを撮影することは憲法13条の趣旨に反して許されない」と判示している。犯罪行為に及ぶ蓋然性がないまま、原告の車両を制止して撮影した行為は憲法に抵触する可能性のある違法な行為だ。
名護市辺野古の新基地建設の抗議活動では現在も、県警や沖縄防衛局が抗議参加者を撮影している。法令や判例に照らして適法かどうか、当局は今一度検討することが求められている。

【抗議活動に公正な判決】中野正剛沖縄国際大教授(刑事法)
今回の判決では、犯罪が起きる蓋然性が高くないのに、東村高江のヘリパット建設に反対する市民を支援する弁護士の車両通行を制止し、車両や弁護士の容貌をビデオ撮影した県警側の行為が違法と判示された。警察官の検問を受ける際、原告の弁護士は自らの身分を明かすことはなかったため、適法に抗議活動をしている一般市民げ原告でも同様の判決が出たことが予測される。
注目すべきは、判決が「抗議参加者であるとの一事を持って、その者が犯罪行為に及ぶ具体的蓋然性があると判断することは、合理性を欠くものと言わざるを得ない」と指摘した点だ。当時、高江では公務執行妨害や道路交通法違反の容疑で逮捕者が出た一方、法を守りながら抗議活動をしていた市民もいたはずだ。抗議活動への一定の理解を示し、中立公正な判断をしている。
被告の県側は検問で原告の車両を止めた理由について「建設工事を妨害するために犯罪行為に至る蓋然性が高い」と判断したと主張しているが、十分に立証を尽くしていない。県警本部の誰がどのような指示や方針で通行を認めないと判断したのか、より具体的な説明が求められる。
今までも同種事案は高江の現地で起きていたが、今回初めて当事者が県を提訴して勝訴した。個人の尊厳や自由を守るためには、こうした地道な訴訟の積み重ねが道を開くのだということを明らかにした。

0 件のコメント:

コメントを投稿