2018年1月31日水曜日

基地で振興 56%否定

《沖縄タイムス 名護市長選世論調査》
〈沖縄タイムス2018年1月30日3面〉

沖縄タイムス社が実施した2月4日投開票の名護市長選世論調査で、市内有権者の支持政党や辺野古新基地建設への賛否、最も関心のある争点などが明らかになった。3期目を目指す現職の稲嶺進氏=社民、共産、社大、自由、民進推薦、立民支持=と、前市議で新人の渡具知武豊氏=自民、公明、維新推薦=が激しい選挙戦を展開しており、終盤戦の動向や投票率が情勢に影響を与えそうだ。

『移設 支持先で賛否明確』

【辺野古移設と地域振興】
選挙戦で最大の争点となっている米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設への賛否を聞いたところ、「反対」が53%で、「どちらかといえば反対」の13%を含めると66%が新基地建設に否定的な回答となった。一方「賛成」は10.5%、「どちらかといえば賛成」は17.8%で、容認の考えは計28.3%にとどまった。「分からない、無回答」は5.7%だった。
稲嶺進氏に投票予定のうち「反対」「どちらといえば反対」は合わせて90.6%に上った。一方、渡具知武豊氏に投票予定のうち「賛成」「どちらといえば賛成」は68.5%で、賛否が明確に割れた。
男女別では、「どちらか言えば」を含めた「反対」が男性60.2%、女性71.6%といずれも賛成を上回った。
辺野古移設による政府の地域振興や経済対策への期待に関しては「期待する」22.6%、「どちらといえば期待する」15.4%で計38%だったのに対し、「期待しない」「どちらといえば期待しない」は56.8%と半数を超えた。「分からない、無回答」は5.2%だった。
辺野古移設に「賛成」とした人のうち約8割は「期待する」とし、「反対」の約7割は「期待しない」と回答した。

『高齢者ほど「大いに関心」』

【選挙への関心度・争点】
名護市長選について、どの程度関心があるかを尋ねたところ、「大いに関心がある」が69.3%、「ある程度関心がある」が22.8%で全体の92.1%が関心を示した。
「大いに関心がある」を年代別に見ると、50代以上が80%超と高く、40代で72.4%、30代で57.8%、29歳以下が43.4%と年代が下がるにつれ低い傾向にある。
「あまり関心がない」を職業別でみると学生が41.8%と高く、次に現業職が15.6%と続いた。最も関心の高い争点を尋ねると「辺野古移設」が53.2%、「雇用・経済振興」が16.6%、「医療・福祉の充実」が11.6%、「教育・子育て支援」が11.4%、「観光振興」が3.5%、「交通・インフラ整備」が0.5%だった。
稲嶺氏へ投票予定と答えた人に最も関心の高い争点を尋ねたところ、「辺野古移設」が79.8%と最も高く、「医療・福祉の充実」が6.7%、「雇用・経済振興」が6.5%、「教育・子育て支援」が6.5%だった。
渡具知氏へ投票予定と答えた人に最も関心の高い争点を尋ねたところ、「雇用・経済振興」が35.3%と最も高く、次いで「教育・子育て支援」が19.5%、「医療・福祉の充実」が18.3%、「観光振興」が10.6%、「辺野古移設」は11.6%だった。
投票先を分からない・無回答とした人の37.8%が「辺野古移設」を最も関心のある争点とした。

『建設強行 不支持が67%』

【移設進める政府姿勢】
普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を進める政府の姿勢について、「不支持」が56.5%と圧倒的に多く、「どちらかといえば不支持」の10.7%を加えると67.2%で約7割に上った。沖縄の選挙で示した民意を顧みない強行に厳しい結果が出た。
「支持」は9.3%、「どちらといえば支持」は18.6%だった。
辺野古に断固反対する稲嶺氏へ投票予定の83.5%が「不支持」、8.7%が「どちらといえば不支持」。
逆に、政府・与党の支援する渡具知氏へ投票予定の24.8%が「支持」、43.9%が「どちらといえば支持」と、68.7%で約7割が理解を示した。
自民党支持者の65.4%が支持、27.9%が不支持、公明党支持者の52.9%が支持、45.8%が不支持だった。国政野党では希望の党の支持者を除き、不支持が支持を上回った。「支持政党なし」と答えた人の13.9%が支持、78.8%が不支持だった。


2018年1月25日木曜日

二階氏の協力要請応じず

《石垣市長選 保守分裂へ》砂川氏、きょう出馬表明
〈沖縄タイムス2018年1月24日2面〉

自民党の二階俊博幹事長は23日、党本部で県議の砂川利勝氏(54)==沖縄・自民==と会い、3月11日投開票の石垣市長選の出馬を見送り、3戦を目指す現職の中山義隆氏(50)への一本化に協力するよう要請した。砂川氏は「重く受け止め、後援会と相談したい」と応じたが、同日夜の会合で予定通り24日に出馬表明することを確認。保守分裂は避けられない情勢だ。
同選挙では、陸自配備計画の是非が最大の争点となる見通し。中山氏は容認の立場だが、受け入れの「最終判断」は保留。砂川氏は配備計画予定地とする現計画の見直しも視野に入れている。
配備に反対する市議の宮良操氏(61)も出馬予定で、三つどもえの公算が大きい。二階氏は砂川氏に「わが国の安全保障を確保する観点から大局的な見地に立ってほしい」と求めていた。
砂川氏の後援会幹部は「(要請は)覚悟の上だった。現職で一本化はあり得ない」と述べた。

《対話で島に元気を》石垣市長選「砂川氏、出馬表明」
〈沖縄タイムス2018年1月25日2面〉

任期満了に伴う来年3月11日の石垣市長選で、新人で県議の砂川利勝氏〈54〉は24日、市内のホテルで記者会見し、正式に出馬表明した。「対話でつくる島づくりが原点。均衡ある発展で石垣に元気を」と決意し、市平得大俣への陸上自衛隊配備計画を「白紙に戻す」と明言した。
島への陸自配備は争点の一つ。砂川氏は賛成の立場を強調しつつも現予定地では「住民合意が得られていない」と指摘。「対話で解決し、住民合意の得られる所を提案する」と述べた。
また、現計画では予算規模が大きい新庁舎の設計を見直すとし「身の丈に合った庁舎を地元業者と造る。(経済含め)先を見越した政策に取り組む」とした。
【砂川利勝】(すながわ・としかつ)1963年9月、市桃里生まれ。中部大学土木工学科卒。2002年から市議を4期務め、12年の県議選で初当選し、現在2期目。県たばこ耕作組合会長。石垣葉たばこ生産振興会長。

《埋まらぬ溝 保守分裂確定的》石垣市長選「陸自配備争点 三つ巴へ」
〈沖縄タイムス2018年1月25日2面〉
3月11日の投開票の石垣市長選は、3選を目指す保守系現職の中山義隆氏(50)に対し、反発する一部保守層の擁立した自民党県議の砂川利勝氏(54)が出馬表明し、保守分裂が確定的となった。自民党本部や県連は現職で一本化しようと動いたが思惑は崩れた。新人で革新系市議の宮良操氏(61)の出馬予定で、三つどもえになる情勢だ。
「常識的に考えて保守が分裂して三つどもえなら共倒れだ」。自民県連幹部は危機感をあらわにする。
20、21の両日、西銘恒三郎衆院議員が石垣入りし、中山、砂川の両氏との調整に臨んだ。市平得大俣で進む陸上自衛隊配備計画の是非が最大の争点となる見通しで、23日には党本部の二階俊博幹事長が砂川氏を呼び、「安全保障を確保する観点から大局的な見地で保守分裂を回避してほしい」と要請していた。
自民関係者は「官邸は相当ピリピリしている。石垣は、国防、国策にも関わり、このままで終わるはずがない」と困惑。県連幹部は「自民の推薦は現職の方向。砂川氏が勝つのはかなり厳しい」と指摘する。
「これまでの総括もせず、現職ありきでは納得できるわけがない」。保守分裂の予兆が表面化したのは昨年12月23日。中山氏擁立を決めた自民党石垣支部内で、砂川氏に近い市議の反発が噴出した。
支部内の溝は、砂川氏が初当選した2012年の県議選で、中山氏が別の保守系候補を支援したことに端を発する。14年の副市長人事では、中山氏が与党系に事前相談なく提案したことで一部が反対に回り、否決するなど確執が広がり、「反中山」派が具体化した。16年6月の市議会では陸自配備推進派の請願採決を巡り意見が割れ、自民会派が一時分裂した。
さらに砂川氏に近い自民関係者は、公明支持層を意識した中山氏が陸自受け入れの「最終判断」を保留する「曖昧な態度」も一部保守系の不信を招いた--と指摘する。
砂川氏の出馬表明に、中山氏の関係者は「想定内」と平静を装い、現職2期8年の実績で「支持を固めている」と自負する。一方、砂川陣営は昨年末から水面下で動き、票の切り崩しを続けている。
自民県連の幹部は「降りるに降りられない状況だろうが、現職県議は重要な存在。調整を続ける」と述べた。


米軍ヘリ 渡名喜に不時着

《事故相次ぎ 反発必至》
〈沖縄タイムス2018年1月24日1面〉

23日午後8時5分ごろ、渡名喜村内の村営ヘリポートに米軍普天間飛行場所属のAH1Z攻撃ヘリコプターが不時着した。県警によると乗員は2人で、けがはない。防衛省関係者によると、米軍は「警告灯が点灯し、予防着陸した」と説明しているという。県内では昨年から米軍機の事故、トラブルが相次いでおり、県内から強い反発が上がるのは必至だ。

【普天間機 村営着陸帯に】
村関係者によると、搭乗していた米兵は「油圧系統の異常を感じた」と話していた。不時着したのは漁港そばの村営ヘリポートで、村立中学校から約300mほどの場所。機体のそばには2人の米兵がいたという。同型機は8日にも読谷村内に不時着している。
富川盛武副知事は事故の報告をしたロック米海兵隊太平洋基地司令官に「言葉にならない。原因の報告を強く求める」と抗議。渡名喜村の桃原優村長は本紙取材に「米軍ヘリの不時着があまりにも多い。日本政府は沖縄の現状を真摯に受け止めてほしい」と語った。
防衛省は23日、マルティネス在日米軍司令官に在日米軍所属全機の整備点検を申し入れた。
政府関係者によると、米海兵隊は24日に整備要員をヘリで渡名喜島へ派遣し、点検の結果、異常がなければ同日中に普天間飛行場へ帰還させる方針だ。
渡名喜島近くには米軍の出砂島射爆撃場があり、2009年にも村営ヘリポートに米軍ヘリが不時着したほか、近くの海中で米軍のものとみられる爆弾の破片が見つかるなど、米軍による被害が相次いでいる。
米軍機を巡っては、昨年12月に宜野湾市内の小学校に普天間所属のCH53E大型輸送ヘリが窓を落下させたほか、今月にはうるま市伊計島などに相次いで不時着し、県内で米軍の整備体制への不安が高まっている。

2018年1月23日火曜日

前哨戦 評価は二分

《南城市長選で瑞慶覧氏当選「両陣営、影響探る」》
〈沖縄タイムス2018年1月23日2面〉

2月4日の名護市長選の「前哨戦」にも位置付けられる南城市長選で、翁長雄志知事が支援した新人の瑞慶覧長敏氏が勝利したことを受けて22日、名護市長選への出馬を表明している現職の稲嶺進氏(72)の陣営は「弾みがつく」、新人の渡具知武豊氏(56)の陣営は「影響はない」と、それぞれの評価を示した。

瑞慶覧氏同様、翁長知事を支持する立場の稲嶺氏は「県内11市のうち9市が保守系市長。その一角が崩れた意義は大きい」と強調する。「周囲からは厳しいという情報が入っていたが、厳しい局面を乗り越えて勝利したことで、名護市長選にも弾みがつく」と喜ぶ。
稲嶺氏の陣営関係者は「南城市で起こったうねりをじわじわと高め、名護で大きなうねりにに変えていきたい」と瑞慶覧氏勝利を歓迎した。23日に決起大会を控え、「南城市からも応援に駆け付けるだろう。運動を盛り上げ、勝利の機運を高めたい」と話した。
南城市長選の翌日の22日が決起大会だった渡具知陣営は、同市長選で政府・与党が推す現職が勝利し、名護市長選へ弾みをつけるスケジュールを描いていた。報道陣から影響について問われた渡具知氏は「分からない」と答え、「(南城市民が)新たな期待を求めていたのだと思う」とコメントした。
渡具知陣営関係者は「南城で勝って勢いに乗りたかったのは正直ある。しかし終わったこと。ここは気を引き締めて万全の体制で臨みたい。名護だけは絶対に負けるわけにはいかない」と気合を入れた。

【知事「勇気得られた」】
翁長雄志知事は、南城市長選で支援した新人で元衆院議員の瑞慶覧長敏氏(59)が当選したことに「相手側のトップリーダーに勝てたことは大変勇気づけられる」と述べ、「オール沖縄」側候補の勝利を喜んだ。22日午前、県庁で記者団に語った。
一方、2月の名護市長選など今後の選挙への影響に関しては「選挙は一つ一つ勝っていくのがセオリー。これはこれでありがたいが、その次(の選挙)も一つ一つということだ」と述べた。

【自民の二階氏「負けは負け」】名護市長選へ決意
南城市長選で、自民、公明、維新が推薦した現職が敗れたことについて、二階俊博自民党幹事長は22日の会見で「残念な結果。負けは負け」とし「次なる戦いに負けてはならない。決意を新たに取り組まなければならない」と名護市長選に向けて気を引き締めた。
菅義偉官房長官は会見で「地方の首長選挙なので、政府としてコメントは控えたい」としつつ、一般的に首長選挙は地域の課題や実績を訴え市民が判断した結果と説明した。名護市長選や知事選への影響についても「地域のさまざまな事情の中で行われる」と述べるにとどめた。

【8年ぶり選挙戦へ】八重瀬町長選「きょう告示」
任期満了に伴う八重瀬町長選が23日に告示される。いずれも無所属新人で、前町議の知念昭則氏(66)、元県議の新垣安弘氏(62)==自民・公明推薦、前町議の宮城勝也氏(43)の3人が立候補を表明しており、8年ぶりの選挙戦が見込まれる。投開票は28日。
合併12年の旧東風平町・具志頭村域の発展格差や人口増対策、産業振興、子育て・福祉政策の手法などが争点になりそうだ。
町選管によると22日現在の選挙人名簿登録者数は2万4111人(男性1万1856人、女性1万2255人)。

2018年1月22日月曜日

強引な市政に批判票

《瑞慶覧氏、受け皿に》
〈沖縄タイムス2018年1月22日2面〉

現職と新人による一騎打ちとなった南城市長選は、「市民の声を行政に反映させる」と訴えた新人の瑞慶覧長敏氏への期待が集まり、65票差で初当選を果たした。2016年の公立保育園全廃決定時に見られた古謝氏の強引な行政運営に反発する現職批判の受け皿になった。

瑞慶覧氏は昨年12月に立候補を表明。出遅れたが、社大党など5党から推薦を受け、翁長雄志知事を支える「オール沖縄」勢力で選挙態勢を構築した。市民の要望を幅広く拾い集め、若年層向けの住宅支援や子ども医療費無料化、公共事業では地元業者が参加しやすくする入札基準の改善などを政策にまとめ上げ、全戸へのビラ入れ配布と遊説に力を入れる”
空中戦”で政策の浸透を図った。
支持する市議は3人と少数だが地域を細かく回り、表には出せない市民の不満をすくいあげた。瑞慶覧氏に期待する女性や若者らもボランティアで運動を手伝い、無党派層や20代の若者に支持を呼びかけた。
新市長にとっては、市議会定数20人のうち、古謝恵春氏の支持する議員が15人を占めており、議会対応が課題となる。訴えてきた政策を実現するには議会の承認が必要で、公約を貫くには難しいかじ取りが迫られそうだ。古謝氏が獲得した1万1千票は現市政への信任票でもあり、今後市政運営の面で一定の配慮が必要となる。
古謝氏は、昨年全廃した公立保育園問題を巡って市民と対立するなど、強引な手法には市民から根強い批判の声が上がっていた。選挙期間中には自民党幹部も続々応援に入り、市外の県議や市町村議らの支援も得たが及ばなかった。

《県政与党、反転へ一歩》自民、知事選に向け痛手

17の市町村選や知事選が控える「選挙イヤー」の幕開けとなった南城市長選は、翁長雄志知事や県政与党ら「オール沖縄」勢力が推した新人が初当選した。
「オール沖縄」勢力が市長選で勝利するのは初となり、2月4日の名護市長選へも一定の影響がありそうだ。自民は保守系首長の「チーム沖縄」の中心メンバーである現職を失い、今後の選挙戦に不安要素を残す結果となった。
「オール沖縄」勢力は、各政党や組織が結集する旗印となる普天間飛行場の県内移設断念などを掲げる「建白書」の実現を訴えた。
ただ、相手候補や応援に入った弁士は基地問題にはほとんど触れておらず、互いの陣営にとって争点は市政の課題に縛られた。
4期目を狙った現職の多選批判など市政運営への不満の受け皿となった面が強く、今後続く選挙は南城との政治構図が異なるため、基地だけではなく経済や教育、福祉などの政策で県政との連携をアピールし、支持を広げられるかがカギとなる。
政府与党の自民は告示後に党本部から岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長らが南城市入りする力の入れようを見せた。背景には南城市を落とせば直近の名護市長選への悪影響を及ばすとの考えがあった。懸念が現実となっただけに、名護だけではなく全県選挙の知事選に向けても痛手となった。
2週間後に控える名護市長選の勝敗は知事選に大きく影響する。現職を支える「オール沖縄」勢力が強みである辺野古新基地反対の民意を集められるか、新人を擁立した自民が公明・維新との協力体制を固め姿勢を奪還できるかが注目される。

瑞慶覧氏が初当選

《南城市長選「古謝氏と65票差」》
〈沖縄タイムス2018年1月22日1面〉

任期満了に伴う南城市長選は21日投開票され、新人で元衆議院議員の瑞慶覧長敏氏(59)==無所属、社民、共産、社大、自由、民進推薦==が1万1429票を獲得し、現職の古謝景春氏(62)==無所属、自民、公明、維新推薦==を65票差で破り、初当選を果たした。当日有権者数は3万4328人。投開率は66.92%で前回を7.55ポイント下回った。

2006年の旧4町村合併後12年の古謝市政の評価や、子育て支援の在り方などを争点に8年ぶりに選挙戦が繰り広げられた。
瑞慶覧氏は子育て世代の支援拡充や公平公正な行政の実現を訴え「市政刷新」を主張してきた。翁長雄志知事も応援に入るなど「オール沖縄勢力」の支援を受け、古謝氏の多選や行政運営への批判の受け皿ともなった。
古謝氏は自民、公明、維新まど県政野党や国会議員らの支援を受けて選挙戦を展開したが及ばなかった。
瑞慶覧氏は「立候補から短い期間の戦いとなったが、手弁当で市内外から駆けつけ、頑張ってくれた支持者の皆さんに感謝したい。3期12年を務めた現職の築いた礎の上に、市民一人一人の声を聞いて地域バランスよい発展を図り、すてきな市をつくりたい」と話した。

【瑞慶覧長敏】(ずけらん・ちょうびん)1958年生まれ。93年から英語教室を経営。2009年から衆議院議員を1期務めた。琉大卒。旧大里村仲間出身。

2018年1月19日金曜日

辺野古着工後 初審判へ

《稲嶺市政8年「市長権限で国に対抗」》
〈沖縄タイムス2018年1月18日2面〉

名護市長選は28日告示、2月4日投開票される。米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設について、3期目を目指す現職の稲嶺進氏(72)は断固反対、前市議で新人の渡具知武豊氏(56)は、県と国の裁判の経緯を注視するという立場で立候補を表明している。沖縄防衛局が2014年7月に事業着手してから初めての審判が下される。
稲嶺氏は10年1月に初当選。普天間の「県外・国外移設」を掲げた当時の民主党政権は辺野古以外を模索していたが、10年5月に辺野古回帰を表明した。
12年12月に自民党が政権に返り咲くと、沖縄防衛局は13年3月、辺野古の埋め立て承認申請を県に提出。
稲嶺市長は同年11月、「断固反対することが市民の強い決意」と承認しないよう求める意見書を提出した。
仲井真知事は13年12月、「県外移設」の公約を覆す形で埋め立てを承認。多くの県民の反発が強まる中、稲嶺市長は14年1月の選挙で、辺野古「推進を主張した前県議の末松文信氏に大差をつけ、再選を果たした。
防衛局はその2日後に辺野古新基地建設に向けた設計業務の入札を公告。民意を一顧だにせず、14年7月に事業着手した。
「新基地建設を阻止する」と訴えた稲嶺市長は、防衛局が作業ヤードとして整備する辺野古漁港の占用許可や、埋め立てで河口部がふさがれる美謝川の水路切り替えに必要な法廷外公共物占用協議などを「市長権限」として洗い出した。
市長の許可を得るのは難しいとみた防衛局は、美謝川の水路切り替えで、従来設計の変更を申請したが、県の承認が得られず、取り下げるなど”悩みの種”として残っている。
移設反対の翁長知事が15年10月、埋め立て承認を取り消し。稲嶺市長は県と国との裁判で法廷に立ち、「名護市や県の理解を得ないまま強行することは、地方自治の原理に反する」と地元の思いを訴えた。稲嶺市長は8年間で5度訪米し、ワシントンなどで新基地建設を断念するよう求めている。
防衛局は知事や市長の権限を潜り抜けるように従来計画を変更し、17年4月の護岸工事にこぎ着けたが、工期が大幅に遅れているのが現状だ。
稲嶺市長は「圧倒的な権力で強行しても工事は進んでいない」との認識で、「後戻りできない状況ではない」と主張している。
渡具知陣営は「残念ながら名護市の権限で止めることはできない」と強調。「あとは司法の判断を見守る」という姿勢だ。

【自民は幹部次々投入】米軍機事故続きで焦り
自民党が米軍普天間飛行場の辺野古移設が争点となる名護市長選に向けて幹部を次々と送り込んでいる。
前回選では支援を見送った公明党も加わり、秋の県知事選も視野に、与野党対決の構図に持ち込んだ。総力戦の背景には、昨年末から米軍機のトラブルが続発し野党に有利にはたきかねないとの焦りもある。
自民党にとっては今月21日に投開票が行われる南城市長選はその後の名護市長選の「前哨戦」。名護市と同様に、与党が推す候補と、翁長雄志知事と野党が支援する候補の一騎打ちの構図だ。
18日には石破茂元幹事長が南城市入りする。自民党幹部がこぞって応援に訪れるのは「南城が落とされれば、名護も勢いがそがれる」(選対関係者)と懸念しているためだ。名護市には、既に自民党が二階俊博幹事長や竹下亘総務会長、塩谷立選対委員長、公明党は斎藤鉄夫選対委員長が訪れ、てこ入れを図った。
米軍機が昨年12月に窓を小学校に落下させたのに続き、今月は2回、不時着トラブルが発生している。共産党の志位和夫委員長が12日に名護市で基地反対を訴えるなど野党側は攻勢を強める。
自民党幹部は「差を詰めてきたので、不時着は痛い」と話す。今後、人気の高い小泉進次郎筆頭副幹事長を街頭演説に投入していく予定だ。

《南城市長選「きょうから三日攻防」》最終盤 集票合戦に熱

21日投開票の南城市長選は18日から「三日攻防」に入る。4選を目指す古謝景春氏(62)無所属、自民、公明、維新推薦と新人で元衆議院議員の瑞慶覧長敏氏(59)無所属、社民、共産、社大、自由、民進推薦の両陣営は、市内各地を遊説カーで回って支持を訴えており、最終盤の集票合戦が過熱している。
古謝氏は3期12年の実績を強調し「市政継続で日本一魅力あるまちづくりに取り組む」と訴える。支持を表明する大里出身の市議全5人を含む与党系市議15人を中心に運動を展開。10日には市街の県議や市町村議員が市内に入って支持を求め、自民、公明などの推薦政党の支援も受ける。
瑞慶覧氏は偏りのない市政を運営するとし「姿勢をチェンジし、市民の声を反映させた政策を実現する」と主張。野党系市議3人を中心に、スポット演説で支持を呼びかける。グァムから帰国した翁長雄志知事も16日に応援演説し、「オール沖縄勢力」の後押しを受ける。
古謝陣営は昨年10月に事務所開きをした。市内72自治会のうち60か所に「字支部長」を配置。さらに約50か所で地域懇談会を重ねてきており、着々と地盤を固めつつある。昨年12月から毎朝のお手振りをはじめ、企業の朝礼にも出向いて支持を呼びかける。
瑞慶覧陣営は昨年12月に事務所を開いた。選挙戦は「市政刷新」を期待する市民スタッフ中心に展開。政策を訴えるビラは2種類、約1万8千枚を印刷し、全世帯に配布。告示前は湯税を徹底し、これまでに市内のほぼ全域を巡り支持を訴えた。
15日から始まった期日前投票は17日までに2415人が投票を済ませた。